ポン・ディッシュー周辺の再編成プロジェクト・コンペ

長谷川逸子(長谷川逸子・建築計画工房)

このコンペはパリ郊外の「ポン・ディッシー周辺の再編成プロジェクト」で、フランスの女性建築家フランソワーズ・レイナード(LAA代表)と組んでの勝利であった。 レイナード氏は元ジャン・ヌーヴェル事務所のスタッフで、「電通タワー」建設時には担当で何回も来日した親日派。 プロジェクトは延床面積約20万・で、オフィス・タワー、住宅、商業施設・学校、パーキングが含まれる大型プロジェクトだ。
敷地はパリ南西部のセーヌ川沿いに美しい緑が広がっている場所で、建物は緑の中に根を張った「キノコ」が上空へ伸びていく様をイメージしたものだという。 これは長谷川氏が今まで実践してきた「身体建築」、すなわち風、水、光、緑などの自然エネルギーをパッシブに活用したエコ建築だ。 また周辺にランドスケープ・デザインによって遊歩道なども組み込み、全体としてランドスケープ・アーキテクチュアをイメージしている。 オフィス用のタワーは延床14万・に及ぶ。
3つのブロックに分節された高さ196mの超高層タワーと、2つに分節された139mタワーからなる。 長谷川氏は「超高層で働く人々のために、精神的に安定できるよう第2の大地としての空中庭園をつくった」という。 審査では「21世紀に相応しい環境をテーマとした新しい都市美の提案であり、未来を感じ取れる作品」と評価された。
2007年4月からスタートしたコンペには世界から多数が参加し、履歴の審査が行われた。 2007年5月に行われた第1回インタビューには5組が残り、基本設計に近いものが要求された。2008年7月に行われた第2回インタビューに残ったのは3組。 審査委員長はIssy les Moulineauxの市長、アンドレ・サンティーニ氏で、審査員は国と隣接の市の市長および行政関係者、フランスの建築家、エンジニアなど多数で構成されていた。

コンセプト
新しい都市環境:セーヌ川沿いの緑の多い特別な敷地に単なる土地利用計画ではなく、敷地の性能をより高める、新しい都市として編集を行う。 その全体の景観はセーヌ川沿いに根を張り、段々に空中へ、キノコのような建築が伸びているイメージになっている。 建築は風、水、光、緑などのパッシブ自然エネルギーでつつまれているエコ建築である。 敷地に非常に高密度の要望プログラムを複合させた建築を提案し、地域の人たちに開かれた魅力ある場所をここに立ち上げる。 提案する環境都市は気象や時間の変化をも織り込んだアノニマスでアモルフな異種混合のフィールドと考える。
ランドスケープ・アーキテクチュア:タワーは25mレベルからはじまり、グランドレベルを活気ある場所にするため開放し、複数の建築空間が連結して一体となるような環境的な新しい都市美を立ち上げる。 タワーで道路をはさんで北側に文化的、芸術的都市のイベント空間があり、南側に太陽光のあふれるレストランやカフェ、さらに賑わう通りに面してショッピング街を展開する。 リズミカルな回遊ネットワークを張り巡らせ、周辺の環境へと繋がっていき、公共交通の駅からオフィス、ショッピング街、住宅にもアクセスできる遊歩道を導入した。 遊歩道は全体を映像のように映し込むガラスと緑のパーゴラで覆われていて、駅とセーヌ川を繋げる。 セーヌ川沿いの大木は残して、ここに全体をランドスケープ・アーキテクチュアといえる新しい都市の環境を提案した。

Photos: courtesy of 長谷川逸子・建築計画工房